「TC(メリクロン)は悪なのか?」 アガベ界を二分するテーマについて

最近、YouTubeやSNSで「TC(組織培養)は悪か?」というテーマが熱い議論を呼んでいます。
著名YouTuberであるIguさんもこのテーマを取り上げ、非常に中立的で深い考察をされていました。

市場価格の大暴落を引き起こした元凶として、TCを敵視する声があるのも事実です。
しかし、中国の生産現場と日本の市場、両方を最前線で見ている私たち『CAUSE TOKYO』の結論はこうです。

「TCは悪ではない。しかし、"温室から出したてのTC"は未完成品である」

今回は、この議論について、感情論抜きでビジネスと育成の観点から掘り下げてみます。

1. なぜ「TCは悪」と言われるのか?

嫌われる理由は主に2つです。

  • 価格破壊: 希少だった高級品種が大量生産され、資産価値が暴落したことへの恨み。
  • 弱さと見た目: 「のっぺりして特徴がない」「日本の環境ですぐ溶ける(枯れる)」という品質への不信感。

確かに、数年前まで数万円した株が数千円になれば、面白くないと感じる方がいるのも無理はありません。

2. それでも「TCは正義」である理由

しかし、視点を変えれば、TCはアガベ界の救世主でもあります。

① 野生株(現地球)を守る防波堤

もしTC技術がなければどうなっていたでしょうか?
世界中の需要を満たすために、メキシコの自生地のアガベは乱獲され、絶滅していたかもしれません。
TC株が流通することで、野生の株にかかるプレッシャーを減らすことができます。

② 裾野の拡大(エントリーモデル)

数千円でカッコいいアガベが買えるようになったおかげで、高校生や若い世代がこの趣味に入ってくることができました。
業界が衰退しないためには、この「入り口」が絶対に必要です。

3. 問題は「技術」ではなく「仕上げ」にある

TCの最大の問題点は「フラスコから出したばかりの赤ちゃん苗」を、そのまま市場に流してしまう業者が多いことです。

【ここが誤解の元】
TC苗は、無菌室のビンの中で、高湿度・栄養過多で育ちます。
いわば「過保護な保育器の中」です。
これをいきなり日本の過酷な環境に出せば、弱くて当然。特徴が出なくて当然です。

「TCだから弱い」のではありません。「順化(ハードニング)が足りない」のです。

4. CAUSE TOKYOが「昆明」にこだわる理由

私たちが提携する中国・昆明の農園では、フラスコから出したTC苗を、すぐに日本へ送ることはしません。

乾燥した風の中に晒し、数ヶ月かけて順化を行います。
この過程で、弱い個体は淘汰され、生き残った株だけが「野生株のような顔つき」に変化します。

こうして仕上げられた株は、もはや「TCか、実生か、カキコか」という議論が無意味になるほど、強く、美しくなります。

結論:出自ではなく「個体」を見よう

「TCは悪か?」
その答えは、「安易なTC販売は悪だが、鍛え上げられたTCは最高のエントリーモデルである」です。

ハイエンドな一点物を求めるなら「野生株(現地球)」を。
形が整った美しい株を手頃に楽しみたいなら「昆明仕上げのTC」を。

それぞれの良さを理解し、使い分けるのが、これからの賢いアガベライフではないでしょうか。

Next Post Previous Post